foriio ティーザーサイト-1
30,000人のクリエイターが集まるサービスを広告無しでつくった裏側 1:創業前(前編)
投稿者
Hiro Yamada

はじまりのページ

2021年8月。foriioの登録クリエイター数が30,000人を超えました。

2019年1月に公式β版をローンチして2年半年。ここまで広告は無し(数週間テストで回してみたことがあったがコスパ悪く即撤退した時を除けば)で伸びて来たポートフォリオサービスは、このページからはじまりました。

これがページは起業前、サービスのアイデアを検証するために、自分がコーディングをして作った超シンプルな(というかお粗末な…と言った方が適切かもしれない)ティーザーページ。料金プランを載せたページの中から、プランを選んでクリックするとその先には「ただいま開発チームと絶賛開発中です。是非、先行ユーザー登録をおねがいします。」とメールアドレスを登録するページが表示されるという形で公開された。(実はこのページの前にトップページが一応あったのだが、これを書くまでに見つけられなかったのでいつか掘り起こせたら更新したいと思う。)

この制作ノートでは、30,000人までの道筋の中でやって来たこと、チャレンジしたことなどを赤裸々に綴っていこうと思います。

転んだりつまづいたりした事が大半の中から得た学びを共有する事で、少しでも他のサービスをデザインするクリエイターの人たちのヒントになればなと思います。

サービス作りたかったら、サービスをつくるな

僕はデザイナーだ。これを読んでいる人でもデザイナーな人が多いかもしれない。(そしてこれを読んでがっかりするかもしれない。)もし君もデザイナーであれば、新しいウェブサービスをデザインするというプロジェクトがきたら、ワクワクしながらどんなUIにしようか、どういった色の選択をすれば最高な雰囲気のものになるのか想像を膨らましてPinterestやDribbbleとにらめっこしたりするだろう。今もそう言ったUIという所からパスされるようなプロジェクトは多いと思うが、サービスをよりよくデザインするには、それがウェブでもアプリでも、共通して言えることがある。

それは、

サービスをつくるところから始めてはいけない

という事だ。

サービスのデザインを良いものにするためには、「ここにヘッダーがあって、ここにこういう機能があって、こんな感じで表示されて…。」という、情報の整理ではなくて「〜はどんな課題があって、今はどういった選択肢があり、彼らは何を選んでいるのか。その結果なにを得ているのか。」という課題の整理が必要だということを学びました。

これからforiioの場合はどんなプロセスを辿ってサービスをデザインして来たかを振り返りながら説明します。

まずはユーザーを理解する。

先ほど話した通り、僕らはサービスを作る所からは始めませんでした。

まず取りかかったのは、「クリエイターをエンパワーメント」するために、どんな事ができるのか…のヒントを得るために、自分の中の仮説を整理してクリエイターの人たちに直接インタビューを始めました。

foriio

ミッション : 
To connect all creators through their work to empower their creativity and opportunity
世界中のクリエイターと作品を繋げ、彼らの創造性と機会をサポートする。

解決する課題(仮説):
1:同業者の中で良いつながりを築きたいと思っているが、
そういった人達と出会える機会が少ない。
2:自分の作品をより多くの人に見て欲しいと思っているが、
現状の手段(メディア)では自分と作品の繫がりが遮断されている。
3:クライアントに対する営業のコストが高い

(当時はミッションがより具体的に明示されていました。)

この課題感の仮説をもとに、知人友人のクリエイターにヒアリングしていきました。定性的なインタビューとして、7名のクリエイターの方に時間を頂き、仮説に優先順位をつけてもらったり、彼らの活動の中で何が妨げと感じているかということを聞いていきました。(この時点ではforiioの詳細は話さず、単純に相手の課題感と、こちらの仮説に対してのフィードバックを得ることに徹しました。)

ヘアメイクの方のヒアリングメモ

ヘアメイクの方のヒアリングメモ

スタイリストさんのヒアリングメモ

スタイリストさんのヒアリングメモ

会社員のデザイナー、フリーのアートディレクター、ヘアメイク、スタイリスト、カメラマン、振付師など様々なジャンルのクリエイターにヒアリングして、その中でジャンルを超えて共通する課題感を探した時に、

「自分の作品をより多くの人に見て欲しいと思っているが、現状の手段(メディア)では自分と作品の繫がりが遮断されている。」

という、自分を見つけてもらえる為の手段に課題感を感じているという事が課題感が一番多く、やはり“自分が何をできるのか”を見せれる場所や手段を共通して求めている事がわかった。

見てもらえたらそこに対して営業頑張るのは個人の努力が必要=最終的には人を見られるみたいに思っているのだと。

なぜ、クリエイターはポートフォリオがつくれなかったのか。

ここから、ではなぜそれが現場出来ていないのかを掘り下げていくと、デザイン職以外のクリエイターにとっては、オンライン上でいつでもだれでも自分の作品を見る事ができるウェブ上のポートフォリオをつくる事がとてつもなくハードルが高い事がわかった。

彼らはいくつかの問題を抱えていた。

1:当時すでにワードプレスやwixは登場していたが、クリエイターはPCすらあまり詳しくない場合も多く、そう言ったサービスにログインして、環境を構築したり、テンプレートを自分の好みにカスタマイズする…という時点で挫折していた。彼らにとってはオンラインでページをデザインするというのは余計なコスト以外の何者でもなかった。(自分の知人のクリエイターの多くも、そんなに拘らないしシンプルで良いから作品を載せるウェブサイトを作って欲しいと良く頼んできていた。そのくらい彼らにとってはこだわるよりもまず見せれる状態にしたいというニーズが高かった。)

2:インスタグラムは人気投票になっていたり、投稿したものが流れてしまったり、自分のページにアクセスしてもらっても、すぐに他の人のページに移動できてしまったり、フォロワー数、いいね数で判断されてしまうことに納得がいっていなかった。その数のバイアス無しで評価されることを望んでいた。

3:そもそも、関わった案件の最終データを持っている人は限られていた。その多くがデザイナーだったりするのだが(最後の工程の印刷する為の入稿データを作るのがデザイナーな場合が多い為)、その案件に関わった人がその最終データを手に入れられることは決して当たり前ではなかった。例えばスタイリストやヘアメイクは終わった後に最終のデータを催促するが、ほとんどの場合デザイナーは忙しくて送ってくれなかったり、送ってくれるがトンボがついたPDFだったり、とんでもないサイズのRAWファイルだったりしていたのだ。彼らはそれを手に入れたからと言って自分でポートフォリオに最適な形にいじれるようなスキルないため、写真屋さんにデータを持っていて印刷してもらったり、結局本屋まで刷り上がりを一部は保管用、一部はポートフォリオ用として買ったりして実績を保管していた。

こういった問題を抱えていることは、デザイナーである自分ですら、デザイナーでない立場の場合どういった状況になってしまうのか想像力を働かせる事ができず、このヒアリングで初めてわかる事が多かった。

そして、こういったデザイナー以外のクリエイターのこの業界には多く携わっており、彼らと一緒にものづくりをする事でクリエイティブ業界は成り立っている。むしろ全体から見るとデザイナーもその中のある一部でしかない。

という事は、今は自分の実績やスキルを表現したくてもその手段がなく機会を失ってしまっている人が多くいるのではないかと考えた。

もし、彼らのポートフォリオがごっそりオンライン上に浮上してきたら…。それはきっと既存の他のサービスではリーチできないクリエイターのデータベースができるきっかけとなり、僕らのミッションの具現化へとつながると確信した。

誰でも使えるぐらいにハードルをさげよう

当時、同業界の人にforiioのアイデアを話すと決まって言われる事があった。

「トップクリエイターを集めろ。選ばれた優れた人が集められればそれ以外の人たちもそこに入りたいと思って集まってくる。」

要はトップクリエイターが使いたいと思うような場所作りをできれば、自然と周りのクリエイターも参加したいと思うサービスになれると。だからハイクラスのクリエイターを狙ったサービスを作るべきだと。

ただし、自分がしたヒアリングの中にはそう言った「トップクリエイターとのつながりが欲しい。」という課題感はなかった。仮説として持っていた“同業者の中で良いつながりを築きたいと思っているが、そういった人達と出会える機会が少ない。”という繋がりに関する課題感もあまり重要視はしておらずむしろ「そういう人と繋がりたいなら、雑誌とかクレジットをみて自分で連絡をとればよい、それを本当にやりたい人はやっている。」と言っていた。そう言ったヒアリング時とのギャップから、課題感が職種問わず共通していることに対してのソリューションを作った方が、最終的に多くを集められるサービスになりうると考えトップクリエイターを見てサービスを作る事はしないと決めた。

そして、この決断にはもう一つ自分が見ていた事例があった。それはインスタグラムだった。日本でも少しずつ使われ始めた2011年頃、僕は株式会社アマナという大手のクリエイティブの制作やストックフォト事業を手がける会社にいたのだが、インスタグラムが出た当初自分も含め多くのクリエイターがこのアプリをあまり良いものだと思っていなかった。加工してよく見せようとはできるが、プロの自分たちがPhotoshopなどをいじって作る拘った写真の方が良いに決まっている。その誇りやプライドがあり、インスタグラムを使って自分たちの作品をそこに載せようとする人は当初ほとんどいなかった。

しかし、このアプリは良い雰囲気の写真・イメージを作ることのハードルを下げたおかげでより多くの人を表現者にするのを助け、彼らの表現の楽しみやそれを共有し見てもらう喜びを教えた。結果的に、ビジュアルでユーザー同士でコミュニケーションをとるインスタグラムはスマホの普及と合わせて急速に巨大プラットフォームとなり、いまや言わずと知れた世界中のクリエイターがあつまる場所になっている。

それと同じで、トップを囲うのではなく、今までハードルが高くてできなかったものを易しくするボトムアップなアプローチが大きく化ける可能性を秘めていると自分は考えていた。そして、このクリエイティブ業界で活動している人は、自分のものを見せるために使わなければ行けないツールのハードルの高さの故に埋もれている人の方が、そうでない人より圧倒的に多いのでは無いかと。なので、自分はまず彼らでも使えるようなサービスにする事が普及させる戦略として勝ち目があると考えた。

作ったとて、実際どれだけ使われる可能性があるか?お金を払うのか?

話が長くなってしまいましたが、これらの経緯を経て作ったのが、このforiioのティーザーサイトである。

そう、これらのヒアリングや検証を踏まえた後でもまだ自分はUIデザインに手を出さなかった。

次にしたのが、これらの自分が立てた仮説が正しいならば実際にこのサービスを告知したらある程度の反応が得られるはずだと考えた。また、その課題の重要度がどのくらいかも検証したかった。つまり本当に深刻な課題なら、お金を払ってでも解決したいと思ってくれるはずなのだ。

なので、UIデザインに入る前にこのティーザーページを作った。それは下記のようなシンプルな構成になっている。

1枚目(今回はデータを見つけられず掲載できていない)

30秒でポートフォリオサイトが作れる!クレジット機能で最短登録するだけで自分のポートフォリオが完成します!統一されたテンプレートだからカスタマイズの手間もなし!という手軽さを謳ったforiioの概要紹介。キャッチコピーには「登録するだけで、自分のポートフォリオが完成。」と書いた。

2枚目

1枚目のCTAとして「もっと詳しく!」ボタンを設置し、それをクリックすると、2枚目の料金プランに飛ぶようにした。つまり、メリットを理解した上で興味を持ったユーザーが次に進むと、料金が掛かることを教えられ使ってみたいならお金を払う意思を見せなければいけないようになっている。

3枚目

2枚目の料金プランのうちからどれかを選び「使ってみる!」をクリックすると、今作っている最中だから、先行ユーザー登録してね!完成したら教えるよ!とメールアドレス登録をすることを促す。

このように料金を払う意思+多少待っても使ってみたいという意思をある程度確認できるティーザーページを作って、自分のツイッターに投稿した。

当時も今も特にたいしたツイッタラーではないが、告知したツイートはいろんなクリエイターの方にシェアされて、1週間で100名近くの登録者が集まった。

このプロセスを経たことで、料金プランを選んだ上で事前ユーザー登録してくれる人がこれだけいるのであれば、一定の需要はあると確信し、サービスのMVPのデザイン+開発に駒を進めることを決意したのでした。

つづく…。

ーーー

長文をここまで読んで頂きありがとうございました!久々に書いたのでちょっとまとめ方が下手な部分もあるかもしれませんが、どんな事を考えながら、どんなプロセスを経ながら作っていたのか伝わり、少しでもヒントになる事があれば幸いです!後数回にわたって、今までのサービスデザインの過程を振り返っていければと思いますので、これを読んで面白いと思って頂けた方は、このページをシェアして頂けると嬉しいです!

次は、この後作ったMVPの話をしたいと思います。

また、ただいまforiioではスケール期にある弊社と一緒に事業を拡大する仲間を募集中です!ご興味ある方は下記ページからぜひご連絡ください!カジュアルな面談からでも全然OKです!ご連絡お待ちしております!

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