──ビジュアルのコンセプトはどのように決めていったのでしょう?
慎 モチーフがなくて困りました。インディーロックみたいなジャンルを服装で表現しようとしてもカート・コバーンくらいというか……ジーンズにネルシャツ、コンバースくらいしかない。アイドルらしくはないんで。
HISHO デザイナーとしては、AKB48やももいろクローバーも人気になって数年経っていて、”かわいい”というのは消費され尽くしていると思ったんです。(そうでない”地下アイドル”と呼ばれるものの中で)今残ってるのは、コンセプトを浸透させてて、グッズまで統一できるようなグループだと思ったから、それを慎さんにぶつけたんですよね。ビジュアルイメージに落とし込んで、どうやってファンにアプローチしていくか、というテーマがありました。
僕は名前から見た目まで、統一感を出したかった。──その上で、運営陣からは音楽性も含めて──”アイドルに寄せたくない”という要望もあったので、ビジュアルも既存のアイドルに混じって、薄れるようなものはやめましょうと。
だからアー写も笑ってなくていいし、担当カラーを衣装にいれたりしなくていいし。で、いろいろ案が出た結果、いきなり海にぶち込むっていう……(笑)。
普通だったら、最初は白ホリ(スタジオ撮影)できちんとした写真を撮っておこうとなると思うんですけど、最初からロケで。「海に沈めよう」みたいな(笑)。で、ずぶ濡れになっていてこちらを睨んでいる。こっから這い上がっていくぞと。
最初からこんな撮影させられるアイドルって多分いないですよ(笑)。白ホリはアルバムまでなかったから。しかも2ndシングルでは水中に潜ってますしね。
慎 インディーズレーベルをやってたからというのもあるかもしれないけれど、白ホリで撮ると色んなものを用意して作り込まない行けないというイメージがあって。
あの頃は予算がもっとなかったからというのもあるけど、根本的なぼくの考え方として人件費を削りたくない。照明、アシスタント、美術……と、人がどんどん増えていくと予算見合わなくなっていく。それでギャランティを減らす交渉をするくらいなら最初から使わない。海なら照明代もスタジオ代もいらないから。自然で撮ったほうが楽なんじゃないかって(笑)。
──その結果、最初のイメージからずぶぬれに……。
HISHO 最初はアー写だからというのもあって、濡れてなかったんですよ。(『8cm EP』メンバー盤CDに使用されている)ソロカットは普通に撮ってたんですけど、段々とインパクトのあるのがほしくなって。”アイドルシーンに出てきた感”がなかった。
──海から上がってきたというバックストーリーがあったんでしょうか。
慎 いくらコンセプトにナードでサッドな部分があるとはいえ、後ろ向きなものはあんまり肯定したくなかったんで入水自殺とられたくなかったんですよ。濡れてないと、海の中にいってしまうって捉えられるかもしれないから。
──この撮影、本人たちが嫌がったりしなかったんでしょうか……。
慎 でもね、撮影してるとバーンと波がきて。「何をいまさら?」って話ですよ(笑)。
HISHO でも、テンションはめちゃくちゃ低かったですよね。暗ッ! って思いましたもん。
慎 特に(メンバーの)なでしこちゃんが海嫌いなんですよね。砂がついたりとか、汚いのが嫌だったみたいで(笑)。
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ヤなことそっとミュートの
クリエイティブの裏側に迫る制作ノートシリーズ
アートディレクターがつくり出すアイドルユニットの一貫性
https://www.foriio.com/works/21/notes/35
連日徹夜で制作した1stシングル
https://www.foriio.com/works/23/notes/37
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